概要
種類株評価は、シリーズ調達において考慮されます。種類株には、普通株に含まれない経済的な権利が付与されており、その権利が普通株に優先する点を考慮します。
端的には、種類株と普通株は一株当たりの価値が異なるのですが、それを論理的に計算することができます。
種類株評価は、手順としては対象会社の株式価値を評価(つまり株価算定を)し、その株式価値を種類株と普通株に配分計算することで実施されます。
ポイント(配分条件)
いくつもポイントはあります。しかし、条件として、みなし清算条項が明示されていることが明確な配分条件となります。例えば、VCなど出資者はIPOまでのエグジットを考慮して、出資額の回収を確保しようとしますので、その出資額はM&Aなどのエグジットにおいて回収確保しておこうとして、みなし清算条項が交わされることが一般的です。詳しく言い出すと、優先配当、転換権など、種類株式には各種追加的権利がありますが、まず配当を前提としていないスタートアップの場合、みなし清算条項が明確な優先配分条件になります。
ポイント(配分計算)
配分計算の方法もいくつかあります。経営研究調査会研究報告第70号スタートアップ企業の価値評価実務 2023年3月16日 日本公認会計士協会(以下、研究報告第70号)では、従来からも存在した方法ですが、3つの方法が明示されました。詳しい内容はいろいろありますが、そのうちOPM法がもっとも明示的にその手順が紹介されています。
OPM法の手順も順をおって説明すると長いです。そこで、張り付けた図表Ⅵ-19の計算結果がOPM法による計算結果の要点です。この計算結果は、ブラックショールズモデルを用いて各ペイオフをオプション価値を計算しています。つまり、みなし清算条項(および優先転換権も含め)による配分回収額をペイオフとしてLP前提を整理し、そのペイオフをコールオプション評価の行使価格とみなして、オプション評価計算するものです。
ブラックショールズモデルによる計算式は複雑(一般的に複雑)ですが、パラメータを用意すれば、いわゆる確定値が計算できる点が客観的です。
パラメーター
パラメーターは、株式価値、行使価格、割引率、予想残存期間、ボラティリティと、ストックオプションの評価においてブラックショールズモデルで使用するパラメーターと基本的に同じです。株式価値は、一般にまず対象会社の株価算定をして求めますし、行使価格には、ペイオフを整理して各分岐点のものを用意します。
残りのパラメーターで「手間」なのは、ボラティリティになりますが、株価算定において類似会社比較法による株価算定をしていれば、それらの類似会社を利用し、その過去株価と財務数値を利用すれば求められます。なお、ボラティリティにはLNなど株価算定では通常利用しない対数計算が含まれます。
客観性
ブラックショールズモデルを用いる計算は、確率密度関数、Dの計算など専門的ではありますが、ブラックショールズモデルが公に認められた計算であるため、客観性を確保しやすいといえます。
その他
そのほか、OPM法は、その前提条件に(わたしが思うに)隠された内容があります。実際にOPM法で種類株式を計算する際にはお伝えします。
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